ノーリフティングケア普及啓発モデル事業(令和元~3年度)の詳細
厚生労働省では、2013(平成25)年に腰痛予防対策指針を改訂し、業務上発生する腰痛の対策に乗り出しています。
そこでは、「原則として人力による人の抱上げは行わせないこと」とあるため、事業者は指針に基づいた対策を講じることが求められています。
具体的には、労働安全衛生マネジメントシステムを導入することであり、①PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)の仕組みを確立させること、②手順化、明文化及び記録化すること、③危険性又は有害性の調査及びその結果に基づく措置を取ること、④事業所全体で推進することをそれぞれ実施していく必要があります。
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職場における腰痛予防対策指針及び解説はこちらをご覧ください(抜粋版)
本会では、腰痛予防対策指針を基に、モデル事業を進めるための様式を次のとおり作成して使用しました。
募集要領 |
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応募申請書(申請①) |
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同意書(申請②) |
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導入前職員アンケート(様式1)※両面印刷 |
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優先度チェックリスト(様式2)※両面印刷 |
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要介護者別リスク見積書(様式3)※両面印刷 |
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ノーリフティング導入見積表(様式4)※記入例含み2枚 |
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福祉用具・機器導入計画表(様式5) |
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ノーリフティング実施計画書(様式6) |
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導入後職員アンケート(様式7)※両面印刷 |
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リスクの見積評価基準(表1) |
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利用者能力に合わせた福祉用具選定チャート(図1) |
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1公募によるモデル事業所の募集
県内各市町行政を通じてモデル事業を募集
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2 推進会議の開催
モデル事業所(6か所)を選定
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3 実施前説明会の開催
モデル事業所のリーダー等を集めて説明会を開催
この会の後、事業所説明会までの間に各事業所で【様式1】導入前職員アンケート及び【様式2】優先度チェックリスト、【様式3】要介護者別リスク見積書、【様式4】ノーリフティング導入見積表、【様式5】福祉用具・機器導入計画表を順次作成しました。
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4 事業所説明会・実施前調査
講師がモデル事業所を訪問し、職員等関係者向け説明会を開催
事業所は【様式1】~【様式5】講師に提出し、講師と共に内容を精査します。
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5 ノーリフティング実施計画書の作成・機器等導入
モデル事業所は、【様式1】~【様式5】の作成結果を踏まえ、【様式6】ノーリフティング実施計画書 及び 作業標準も作成しました。
県社協は【様式5】に基づく福祉用具・機器等の発注等を行い、モデル事業所に貸与しました。
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6 事前研修の実施
講師は、導入した福祉用具・機器の活用と身体の機能・構造に即した介護技術に関する研修を行いました。
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7 ノーリフティングケアの実施〔職場巡回・研修〕
モデル事業所は、実施計画期間中ノーリフティングケアを実践した介護業務を行います。(【様式2】優先度チェックリストを作成して職場巡視を行う)。
講師は実施計画期間中モデル事業所の巡回指導を行います。巡回最終月には【様式7】導入後職員アンケートと実施後調査を行い、事業効果を検証します。
※令和2年度は、11月に「姿勢の見方」、12月に「姿勢の整え方」の研修を実施しました。
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8 報告会の開催
モデル事業所が一堂に会し、成果や課題、今後の方策について意見交換を行いました。
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モデル事業所で実施した導入前と導入後の職員アンケートについて集計・分析しました。
集計結果の全体はこちらをご覧ください。
ここでは何点かポイントをピックアップしてお伝えします。
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1 持ち上げや引きずる介助はありますか(導入前に聞いた項目)
業務中、持ち上げたり抱え上げたりする介助は82%の事業所が行っている現状が明らかになりました。
環境面での不都合や人員不足によって時間に追われる現状があることから、人力による介助を行っている事業所はまだまだ多いようです。
身体的に負担の大きい介助場面としては、ベッド上移動、体位変換、おむつ交換、移乗、トイレ介助、入浴介助があります。
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2 腰痛の状況(導入前と導入後に聞いた状況)
モデル事業実施後、腰痛の症状を訴える職員は減少しました。
半年程度の期間で出た結果ですので、ノーリフティングケアを継続・浸透させていくことで、さらなる改善が期待できます。
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3 福祉用具等の使用状況について(導入前と導入後に聞いた状況)
福祉用具や介護技術について改めて学んだことや、適切な使用ができるよう利用者のアセスメントを行った結果、福祉用具を使用して介助を行う人が大半となりました。全ての介助者が正しく福祉用具や介護技術を使うことで、利用者にとってもさらに安心できる事業所になっていくと思います。
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4 福祉用具導入で身体的負担は軽減したか(導入後に聞いた状況)
ノーリフティングケア導入後、身体的な負担が軽減されたとほとんどの方が感じています。
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利用者のアセスメント、ノーリフティング導入見積、福祉用具導入、そして各種研修を実施したことによって、短期間でも改善や効果は見られました。
今後、ノーリフティングケアの取り組みを継続していくことはもちろんですが、福祉用具の活用に積極的でない職員が2割程度いることに着目し、職場内でのさらなる浸透や意識統一については継続的な課題として捉え、各事業所で取り組みを進めていく必要があります。